副業の売上で儲けが出たら?副業者の確定申告のキホン

服部大

服部大

2020.10.12
副業の売上で儲けが出たら?副業者の確定申告のキホン イメージ

多くの企業がリモートワークを推奨したりAIが発達したりと働き方や雇用形態に大きな変化があり、給与収入だけでは将来に不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

そのような背景から新たに副業を始める方や、これまで以上に副業を頑張ろうと決心する方も増えることが予想される一方、

・副業を始めると会社にバレるの?
・副業をすると確定申告しないといけないの?

といった税金にまつわる疑問が生ずることかと思います。

副業では一般的には開業届などの事前手続きは必要ありませんが、確定申告を怠ると様々なペナルティを課されかねません。そこで今回は副業と確定申告について解説していきます。


▼ 目次
1. 開業届の提出が必要なケースとは?
2. 確定申告が“必要”な場合と“すべき”場合
2-1. 確定申告をしなければならない場合は?
2-2. 確定申告をすべき場合は?
3. 実際の確定申告までの流れは?
4. 副業の種類ごとに注意すべき“経費”のポイント
5. まとめ


開業届の提出が必要なケースとは?

基本的には副業の場合、開業届の提出はいりません
その理由は、開業届は“事業”を始める際に提出する書類だからです。

ここで言う“事業”とは、本業としてその“事業”による儲けだけで食べていけるような規模を指します。

したがって一般的な副業の場合には、本業としての給与収入があってこその存在と言えるでしょうから、基本的には“事業”には該当せず、開業届の提出も必要ないのです。

副業として始めたビジネスが成長し、給与収入以上の稼ぎへと拡大して副業の域を超えていると判断できる場合には、そのときに改めて開業届の提出を検討していくと良いでしょう。

具体的には毎月数十万円の儲けが発生し、仮に給与収入がゼロになっても十分に生活を維持できるような事業規模となれば、開業届の提出を検討しましょう。
 
 

確定申告が“必要”な場合と“すべき”場合

副業を始めたからといって必ずしも確定申告が必要というワケではありません。

そもそも副業収入が発生したとしても、経費を差し引いた後の「儲け(=所得)」がなければ、確定申告はおろか、副業分の税金すら払う必要はないのです。

所得税にせよ法人税にせよ、売上に対してではなく、「儲け」に対して税金がかかります。したがって売上が1億円でも1千万円でも、「儲け」が同じ額ならば税額は変わりません。

つまり「副業の儲けが○○円だったので、所得税を××円納めます」と自己申告することが、確定申告の本質なのです。
 
 

確定申告をしなければならない場合は?

副業を行う方が確定申告をしなければならないのは、副業の「所得」が年間で20万円を超える場合です。

したがってそれ以下の場合には確定申告義務はありません。
(ただし住民税にはそのような制度はありませんので、所得が20万円以下であっても本来住民税の申告はしなくてはいけません。)

もし副業の所得が20万円を超えているのに確定申告をしておらず、税務調査などで発覚した場合には、本来納付すべきだった税額の15%~20%が『無申告加算税』として上乗せされ、さらには本来の納期限から超過した日数に応じて年間7.3%~14.6%もの『延滞税(≒利息)』を支払わなければなりません。

このように無申告のペナルティは非常に重たいものですので、申告義務のある方は必ず確定申告を行うようにしましょう。
 
 

確定申告をすべき場合は?

これまで確定申告しなければならないケースを確認しましたが、確定申告義務がないからといって確定申告をしてはいけないワケではありません。

「確定申告をした方がおトク! 」という場合には自主的に申告することが可能です。

具体的には以下のようなケースでは確定申告を行うべきだと考えられます。

確定申告をすべきケース

・住宅を取得し、今年から住宅ローン控除を受けたい場合
・医療費控除を受けたい場合
・副業収入から源泉所得税が天引きされており、確定申告をすることで還付を受けられる場合

特にwebライターやインフルエンサーなどを副業としている場合、自身の副業収入から税金が天引き(=源泉徴収)されていないか注意が必要です。

天引きされた税金は売上の1割程度を機械的に計算した“概算”であり、実際に経費を差し引いた「所得」から計算される正式な税額よりも大きい(=納め過ぎ)場合があります。

その場合には、確定申告することで納め過ぎた税金を返してもらうことができるのです。
 
 

実際の確定申告までの流れは?

先ほど申し上げたとおり、所得税においては副業による所得が20万円以下であれば確定申告は不要となります。

これは別の言い方をすれば、確定申告の必要性を判断するためには、まず副業でいくら儲かっているのかを正しく計算しなければならないということです。

したがって確定申告の必要性を判断するためにも、まずは副業による所得を把握することは必須なのです。

とはいえ、そこまで詳細に帳面を付ける必要はありません。副業の規模であれば、売上や経費(仕入やガソリン代、携帯料金など)をエクセルなどで集計する程度でも十分です。

なお領収書などはそれらの数字の根拠となるものなので、きちんと保管するようにしてください。

こうして日頃から集計した売上や経費について、1~12月の一年分を集計し、これらを差引きすることによって、副業による年間の所得が計算できるのです。

副業による所得が計算できれば、あとは実際に所得税の確定申告書へ転記を行っていくだけです。

確定申告書の作成は、国税庁の『申告書作成コーナー』や確定申告相談窓口、クラウドサービス(マネーフォワードクラウドfreeeなど)を使用して作成することをお勧めします。

以上の内容を整理すると、実際の確定申告の流れは以下のとおりとなります。

実際の確定申告の流れ

1. 日々の売上や経費を集計する
2. 1をもとに、年間の所得を計算する
3. 2をもとに、確定申告書へ記入する(クラウドサービスの利用がおすすめ)
4. 作成した確定申告書を税務署へ提出し、納税を行う(または還付を受ける)

確定申告書の提出と税金納付の期限は翌年2月16日~3月15日までとなりますので、くれぐれもご注意ください。
 
 

副業の種類ごとに注意すべき“経費”のポイント

これまで私が“儲け”や“所得”という表現をするたびに、「儲からないならそもそも副業なんてやらないのでは?」と疑問に思う方もいるのではないかと思います。

しかしこれまで単なる生活費となっていたものを“副業の経費”として計上することによって、副業の所得は圧縮することができるのです

もちろん副業とは関係ないものを経費とすることはNGですが、副業で使用するものであれば、その使用割合に応じて経費化することができるのです。

しかし売上はわかりやすい反面、近年増加しているYouTuberやインフルエンサー、Uber Eats配達員など副業の種類も多岐に渡っているため、いざ“経費”と言われても一体何が対象となるのかピンと来ない方も多いと思います。

たとえば副業の種類によって、以下のような支出が経費となり得るでしょう。

副業の種類と経費の一般例
YouTuber
インフルエンサー
(Instagramerなど)
家賃(副業利用スペース分) / 電気代 / 撮影機材費 / 動画用インテリア費 / 動画編集外注費 / 衣装代など
Uber Eats配達員 車両代 / ガソリン代 / 携帯電話代 / 駐車場代 / 交通費 / 車両保険代など
ハンドメイド作品等のオンライン販売 家賃 / (副業利用スペース分) / 電気代 / 材料仕入代 / 商品撮影機材費 / 作業工具費 / 参考図書費 / 販売手数料 / 梱包費用など
プログラミング
動画編集
家賃(副業利用スペース分) / 電気代 / 専用ソフト代 / PC購入費 / スキルアップのための教材費など

これらはあくまで一例であるため、実際のご自身の副業での使用実態に照らし合わせて、経費で落とせるものとそうでないものを判別するようにしてください。

なお家や携帯電話、パソコン、車、服などは、副業だけでなくプライベートでも使用するものだと思います。その場合には“ゼロか100%か”で考えるのではなく、副業での使用割合に応じて経費で落とすようにしましょう。

たとえば家賃なら副業で使うスペースの床面積に応じて経費化したり、車を週2日程度副業で使用するのであれば、ガソリン代や整備費用のうち、全体の2/7の割合を経費で上げていくことも可能と考えられます。

このように少しでも副業で使用するものであれば、副業としての使用割合を検討の上で経費化し、副業の所得を圧縮していくことが可能となるのです。
 
 

まとめ

今回は副業を行う方が知っておくべき確定申告についてお話ししました。

お伝えした通り、確定申告の必要性の有無を考える前に、まずは副業の所得がいくら出ているのか把握することからスタートします。

確定申告はあくまで1年分の売上や経費を転記するだけの作業と考え、日々の売上や経費の集計、そして“そもそも何が経費となるのか”についてじっくりと考え、取り組んでいきましょう。

 

服部大
この記事を書いた人

服部大

2020年2月、30歳のときに愛知県名古屋市内にて税理士事務所を開業。
 

平均年齢が60歳を超える税理士業界内で数少ない若手税理士として、同年代の経営者やフリーランス、副業に取り組む方々にとっての良き相談相手となれるよう日々奮闘している。
 

顧問業務だけでなくスポットでの税務相談や執筆活動も行っており、「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えることができる専門家を志している。
 
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