社会保険料控除を受けるには? 確定申告の書き方をおさらい

山口史津

山口史津

2020.08.05
社会保険料控除を受けるには? 確定申告の書き方をおさらい イメージ

フリーランスや個人事業主の方は、国民年金などの社会保険料を自分で支払っている分、その額の大きさも感じやすいのではないでしょうか。

会社員の場合、社会保険料の天引きや年末調整は会社がやってくれますが、フリーランスでは確定申告での調整も必要です。

きちんと社会保険料を申告すると、節税対策にもなります。社会保険料と確定申告について、フリーランスが知っておきたいポイントを解説します。


▼ 目次
1. 社会保険料の控除とは
1-1. 社会保険料控除の対象になる保険料
1-2. いつからいつまで対象になるか
2. 確定申告での社会保険料控除の書き方
2-1. 社会保険料控除の流れ
2-2. 社会保険料控除の上限はない
3. 社会保険料控除の疑問を解決!
3-1. 社会保険料控除証明書とは?
3-2. 妻(夫)の分は控除できるの?
3-3. 扶養家族の社会保険料は?
4. まとめ


 

社会保険料の控除とは

社会保険料の控除とは

社会保険料控除とは、1年間に払った社会保険料の金額分、所得税が課税されないこと(=控除)です。

フリーランスであれば自分で支払った社会保険料、会社員であれば給与から天引きされた社会保険料になります。年末調整または確定申告をすることで、社会保険料控除が受けられます。
 

社会保険料控除の対象になる保険料

社会保険料控除の対象になるのは、健康保険、国民年金、介護保険料などです。個人事業主やフリーランスに該当するのは、主にこの3つです(介護保険料の支払いは40歳から)。

項目の分類は全部で14種類あり、詳しくは国税庁ホームページに一覧が記載されています。該当する保険料の支払いをしている方は、年金事務所などから送られてくる書類をなくさないよう保管しておきましょう。

※出典:国税庁「社会保険料控除
 

いつからいつまで対象になるか

社会保険料控除の対象になる期間は、1年間です。

個人事業主の場合、2020年1月~12月の社会保険料控除を、2021年3月に行う確定申告で申請します。(会社員の場合は年末調整としてその年のうちに行われ、会社に必要書類を提出する以外にすることはありません。)

この「1年間」は、保険料1年分という意味ではなく、「その年で払ったもの」という考え方になっています。

例えば国民年金保険料を2年分先払いしたり、生計を同じくする子どもの過去の国民年金保険料をまとめて支払ったりした場合でも、控除は保険料の1年分で線引きされず、その年に払ったものが対象となります。
 
 

確定申告での社会保険料控除の書き方

確定申告での社会保険料控除の書き方

確定申告書にはA、Bの2種類があり、個人事業主の場合はBを使用します。第一表、第二表は収入、控除、住民税について、例外的な所得などがある人は第三表、第四表も記載することがあります。

ここでは社会保険料控除の記入について、第一表、第二表の記入例と併せて説明します。
 

社会保険料控除の流れ

(1)控除証明書を準備する

確定申告を行うにあたり、国民年金の控除証明書を準備しましょう。通常10月末、10~12月に国民年金に切り替わった場合は翌年2月に送られてくる書類で、確定申告での添付が必要です。届いたら忘れずに保管しておきましょう。

国民年金の控除証明書

健康保険や介護保険料は、国民年金と異なり控除証明書(の添付)は必要ありません。通帳など支払額がわかるものを準備して確定申告を行います。

(2)確定申告書Bに記入

社会保険料については、第一表の「所得から差し引かれる金額」の⑩番に保険料の合計額を記入します。具体的な内訳は、第二表の「所得から差し引かれる金額に関する事項」の⑩番に、国民年金など項目別の金額を記載します。

国税庁ホームページに詳しく記載方法が説明されていますので、ご参考ください。

※出典:国税庁「申告書の記載例

令和2年以降の確定申告については、「新型コロナウイルス感染症に関する対応」で、申請期間や方法が例年と異なる可能性があります。実際に申告を行うにあたっては、国税庁ホームページや税務署で最新情報を確認してください。
 

社会保険料控除の上限はない

社会保険料控除は「その年に払った保険料の全額」であり、上限額はありません。申告もれがあると、本来課税されなかった金額に所得税がかかってしまいますので、健康保険、国民年金など該当するものはすべて記載しましょう。

第二表の社会保険料項目欄は3つですが、納めた社会保険料が4つ以上ある場合は線を引いて欄を書き足すか、第二表をもう一枚使用して対応します。

一方、生命保険料控除などには上限額があります。ややこしいですが、取り違えて扱わないよう注意してください。
 

社会保険料控除の疑問を解決!

社会保険料控除の疑問を解決!

最後に、社会保険料控除でつまずきがちな疑問点についてまとめます。

社会保険料控除証明書とは?

社会保険料控除証明書とは、国民年金を納めると年金事務所から送られてくる、納付金額を証明する書類です。確定申告で国民年金の社会保険料控除を受けるためには、この書類を添付しなければいけません。

控除証明書は10月末に年金事務所から発送され、1~9月まで納付した金額と、引き続き12月まで納めた場合の見込み額が書かれています。10~12月の間に国民年金の納付をスタートした場合は、同書は2月に発送されます。

見込み額より多く年金を支払ったときは、領収証書の提示や控除証明書の再発行で対応します。紛失してしまった場合も、再交付申請を行うと1週間ほどで再発行してもらえます。
※参考:日本年金機構「通知書再交付申請
 

妻(夫)の分は控除できるの?

配偶者を自分の扶養に入れていて、その分の社会保険料も支払っている場合は、確定申告で控除の申請をすることができます。

「実際に支払った額」が対象となりますので、世帯主など自分名義のものであっても、実際は配偶者が支出している場合は、配偶者の社会保険料控除の対象となります。
 

扶養家族の社会保険料は?

配偶者以外にも、子どもなど扶養親族の社会保険料を支払った場合も控除の対象になります。
 
 

まとめ

国民年金などの社会保険料は、所得税の控除対象になります。「1年で実際に支払った額」がポイントになるので、前納や家族の分を払った場合も確定申告で忘れずに記載しましょう。

支払額の確認に困らないよう、社会保険料の額がわかる書類は集約して保管する習慣をつけることをおすすめします。

山口史津
この記事を書いた人

山口史津

ライター、編集者。 仙台で会社員と個人ライターの仕事を両立する「半分フリー」で活動中。企業採用サイト全記事取材・執筆・編集、書籍編集、インタビュー、校閲、コピーライティングなどWeb・紙媒体問わず取り組んでいる。映画「弥生、三月-君を愛した30年-」ロケ地インタビュー執筆。情報系の研究者インタビュー記事「研究を聴く」ほか実績多数。
 

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