【税理士監修】個人事業主は消費税を請求できる! 売上1,000万円以下は免税

山口史津

山口史津

2020.06.18
【税理士監修】個人事業主は消費税を請求できる! 売上1,000万円以下は免税 イメージ

個人事業者として仕事を始め、いざ請求書を発行するとき「そういえば消費税を請求できる側だったっけ……」と迷った経験はあるでしょうか。

意外とシンプルな「消費税の請求」についてまとめました。


▼ 目次
1. 個人事業主は顧客に消費税を請求できる
1-1. 消費税を納める仕組み
1-2. 事業者は税務署に消費税を納める必要がある
2. 売上1,000万円以下の免税事業者でも請求は可能
2-1. 個人事業主の多くは免税事業者に該当する
2-2. 消費税の仕入額控除とは
3. 請求書での消費税の書き方
3-1. 税込、税抜は明確にしよう
3-2. 【サンプル付き】 請求書の消費税書き方ポイント
3-3. 請求書の様式は法律で決まっているわけではない
4. まとめ
5. 監修税理士


 

個人事業主は顧客に消費税を請求できる

個人事業主として仕事をしている方は、収入額などにかかわらず、取引先(顧客)に消費税を請求することができます。消費税を納める場合は売上額による線引きがありますが、請求する場合は特に条件はありません。

まずは消費税の仕組みについて説明します。納税義務・免除について気になる方は「2.売上1,000万円以下の免税事業者でも請求は可能」をご覧ください。
 

消費税を納める仕組み

消費税はいわゆる間接税であり、税金を実際に支払う人(負担者)と、納める人(納税者)が一致していません。企業や個人事業主は消費税を受け取りますが、収入として得ているわけではなく、納税までの間「預かっている」状態です。
 

事業者は税務署に消費税を納める必要がある

消費税の納税義務があるのは、基準期間、またはその後一定期間の売上が1,000万円を超える法人と個人事業者です。消費者個人の場合は商品代に加えて消費税を払う以外にすべきことはありませんが、条件を満たす事業者であれば消費者や顧客から受け取った消費税を税務署に納付しなければなりません。

課税される項目は「事業として対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供」、「外国から商品を輸入する場合」となっています。事業としての仕事で発生するほとんどのお金に課税されています。

※土地の譲渡など一部の取引は課税対象外です。非課税となる項目は国税庁HPで確認することができます。
 

売上1,000万円以下の免税事業者でも請求は可能

売上1,000万円以下の免税事業者でも請求は可能

売上1,000万円に達していなくても、消費税を請求することができます。また、税務申告上で消費税を二重に支払うことを防ぐ仕組みもあるため、請求により損をさせる心配もありません。
 

個人事業主の多くは免税事業者に該当する

国税庁によると、個人事業主の平均年収は270万円(男性356万円、女性225万円)です。つまり多くの個人事業主が免税事業者に該当し、消費税の取り扱いは請求のみで申告と納税は不要ということになります。

また、期間によっても免税事業者になります。課税対象となるのは前々年(およそ2年前)の売上額が1,000万円を超える事業年度ですので、開業した年と翌年は前々年の売上額が無いため課税対象になりません。

※開業して3年目以降、前々年または前年の1~6月の売上高と給料支払金額がともに1,000万円を超えると消費税の納税義務が発生し、申告する必要があります。

国税庁「消費税のしくみ」

出典:国税庁「消費税のしくみ」
 

消費税の仕入税額控除とは

消費税の仕入税額控除とは、消費税を二重に支払うことがないよう、売上にかかる消費税から経費にかかった消費税を差し引くことです。仕入税額控除の対象となる取引は商品や原材料、事務用品などの購入や広告宣伝費、外注費などが挙げられます。

例えば個人事業主として働くAさんが外注としてWebサイト制作を請け、その制作費をクライアント企業に請求するときは、消費税も含めた額で請求書を発行できます。

クライアント企業は売上にかかった消費税を納めるときに外注分の消費税を差し引くことができるため、損失が発生することはありません。

確定申告の際、前々年または特定期間の売上が1,000万円に届いているかどうか忘れずに確認するようにしましょう。
 

請求書での消費税の書き方

請求書での消費税の書き方

免税事業者であっても、個人事業主はクライアントに消費税を請求できることがわかりました。ここでは、適切な請求書の書き方について解説します。
 

税込、税抜は明確にしよう

消費税請求の可否は相手方の損失とは関連がありませんので、免税事業者でも遠慮せずに請求書に消費税額を記載しましょう。

税込・税抜の認識違いを防ぐためにも、早い段階で税抜き額を確かめておくことをおすすめします。少額であれば差額も小さく済みますが、まとまった仕事量・額面の場合手元に残る金額が大きく異なります。

例えば「20万円の仕事」が税抜であれば、請求額は22万円でそこから消費税・源泉徴収額が引かれますが、税込だとすると請求の総額が20万円となり、消費税を除くと約18万2000円(消費税10%)。積み重なると収入に影響をもたらすことは、想像に難くないでしょう。

フリーランスや個人事業主の方は、仕事の受注時に税抜額を確認しておく習慣をつけることをおすすめします。
 

【サンプル付き】請求書の消費税書き方ポイント

請求書を作成する際の注意点は、税抜額と消費税額の欄を分けておくことです。特に消費税が8%となる軽減税率対象の品目(食料品、定期購読の新聞)が含まれている場合は、合計額のみだと混乱の原因になるため、8%と10%の項目を分けて記載しましょう。
 

品目は、合計額より一段階細かい分類で記入するとわかりやすくなります。請求の合計が「サイト制作」ならコーディングやデザインなどの各作業、「原稿料」なら料金の異なる記事で分類するといった具合です。

税込額が決まっている場合、消費税額(10%)は税込額を11で割った数字になります。税抜額に消費税額を加算する場合と間違えないように注意しましょう。Excelを使用する場合は税込・税抜それぞれに対応した関数を入れたひな形を作成しておくと、計算間違いをしにくくなります。

請求書を毎回手作業で作成すると手間がかかり、ケアレスミスが発生してしまうことも。近年は請求書を作成できる有料・無料のサービスが充実しているため、毎月のルーティンの手間を減らすために活用するのも良いでしょう。
 

請求書の様式は法律で決まっているわけではない

請求書には請求先、金額、税額、振込先など一定の情報を盛り込まなければいけませんが、法律で様式が決められているわけではありません。自分で発行したり、取引先の様式があればそれを利用したり、臨機応変に対応しましょう。

振込手数料に関する記載や管理用の通し番号は請求先によって異なりますので、継続的な案件では初回にテンプレートを確保しておくとその後が楽になります。基本的な項目については、国税庁が情報を公開しています。
国税庁「請求書等の記載事項や発行のしかた」

効率よく請求作業を進めるために、ペーパーレス化を心掛けるのもおすすめです。郵送は印刷、宛名書きなど手間が大幅に増えますので、可能なら取引先にPDFでの共有を提案してみましょう。

請求書の押印は慣習であり、実務上はなくても問題なく処理できます。押印は基本的に省略するか、Web上で作成できる電子印鑑を使うと簡単です。

ただし、公的機関や決済の手順が厳密に決められている企業に関しては、決められた様式にのっとって進めるのがスムーズです。
 

まとめ

個人事業主は、クライアントに消費税を請求することができます。

開業して3年目以降、前々年または前年の1~6月の売上高と給料支払金額がともに1,000万円を超えると消費税の納税義務が発生し、申告する必要があります。

事業が軌道に乗り売上が増えてきたら、後から発生する納税に備えて収支の管理にも力を入れましょう。
 
 

監修税理士

屋税理士事務所所長

屋税理士事務所
https://okutax.com/

監修税理士について

大学卒業後、税理士事務所に入社し、29歳で税理士事務所を設立しました。
その間、一貫して中小企業の会計・税務に携わり、経営者の皆様と一緒に成長してきました。

現在では、新規会社設立を目指す若い経営者様から、事業の継続にお悩みのご年配の経営者様まで、業種・規模を問わず様々な中小企業様からご契約をいただいております。

新規会社設立を目指す経営者を支援する「DREAM GATE」アドバイザーに登録しております。
https://profile.dreamgate.gr.jp/consul/pro/tax_office?advisor_field_id=

本記事へのコメント

企業が事業活動を行っていくうえで税金に関する問題は避けて通れません。

法人であれば法人税、個人事業主であれば所得税の申告と納税を行うことになりますが、消費税は法人と個人事業主に共通する問題です。

法人でも個人事業主でも、基準期間(2年前の事業年度)の課税売上高が1,000万円未満であれば消費税の申告と納税義務が免除されます。

しかしこの場合でも、得意先に消費税を請求することは全く問題無いのです。

これは、年間売上高1,000万円未満の中小企業の事務手続きの軽減を図るため、政策的な見地から法律で認められていることですので、得意先には遠慮なく消費税を請求しましょう。

また法律上、取引先は正当な消費税の請求を拒否することはできません。


山口史津
この記事を書いた人

山口史津

ライター、編集者。 仙台で会社員と個人ライターの仕事を両立する「半分フリー」で活動中。企業採用サイト全記事取材・執筆・編集、書籍編集、インタビュー、校閲、コピーライティングなどWeb・紙媒体問わず取り組んでいる。映画「弥生、三月-君を愛した30年-」ロケ地インタビュー執筆。情報系の研究者インタビュー記事「研究を聴く」ほか実績多数。
 

https://note.com/violalto/n/nc6801402b406