「リモートワークを始めて一年。なんだかチームワークや業務効率が悪くなった気がする…」
それ、もしかすると「五感」をうまく活用できていないからかもしれません。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚。
日々の生活において、さまざまな情報や刺激を与えてくれる五感は欠かせない存在です。
この記事では、リモートワーク中に激減してしまう「五感の活用機会」に着目し
・リモートワークと五感の関係性
・五感を用いた「非言語コミュニケーション」の重要性
・リモートワーク中でも五感をフル活用する方法
について解説していきます。
▼ 目次
1. リモートワークが主流になり「五感をフル活用」できる機会が減少
2. 五感を用いて行う「非言語コミュニケーション」の重要性
3. 五感をフル活用してリモートワークを充実させよう!
3-1. 週1-2回程度の出社日を設ける
3-2. web会議は積極的に取り入れ、前後に雑談の機会を設ける
3-3. 仕事に集中できるよう、五感に優しい環境を作り上げる
4. まとめ
私たちは、普段、無意識のうちに五感をフル活用して「コミュニケーション」と「非言語コミュニケーション」を成立させています。
(※「非言語コミュニケーション」については、次の段落で詳細に解説します。)
人と話したり顔色を窺ったりはもちろん、会話の終わりに軽く肩を叩いたり、出社した同僚の匂いから「香水をつけているということは、今日は重要な商談がある日だな」と察したり、パートさんが差し入れてくれた地元土産に舌鼓を打ったり……。
オフィスに出社せず、自宅などの独立した環境で働くリモートワークの場合、こうした五感の活用機会は大きく減少してしまいます。五感を活用した非言語コミュニケーションの多くは、直接人と対面することによって初めて成り立つためです。
一方のリモートワークでは、使用する五感はほぼほぼ視覚に限られます。聴覚も時々使いますが、触覚や嗅覚、味覚といった五感の活用機会はほとんど失われていることでしょう。
このように、五感から得られる情報量が激減したことで、
・日々にメリハリがないように感じる
・自身があまり成長できていないように感じる
・世間から取り残されているような疎外感を感じる
といった悪影響が生じることも。
「リモートワークになってから、どうもやる気が出ない」
「最初は快適に感じていたけど、半年もするとオフィスが恋しくなってきた」
そう感じる原因には、五感から得られる情報量の減少が影響しているかもしれません。
“非言語コミュニケーションとは、言葉以外の手段によるコミュニケーションのことである。
人間は日常的に複数の非言語的手がかりを使いメッセージを伝達しあっている。これを「非言語的コミュニケーション」(nonverbal communication ノンバーバル・コミュニケーション)という。この非言語的なコミュニケーションは、意識して用いていることもあれば、無意識的に用いていることもある。”
――引用:Wikipedia「非言語コミュニケーション – Wikipedia」より
視線や身振り手振り、話すスピードなどを通じ、意識的・無意識的に行われている「非言語コミュニケーション」。
非言語コミュニケーションは、言葉を補完したり、自分の本心を伝えたり、相手の気持ちを汲み取りやすくしたりと、人間関係を円滑にするための様々な役割を担っています。
例えば、タスクが詰まって忙しそうな後輩に「大丈夫?」と訊いたとしましょう。後輩は「大丈夫です」と答えますが、顔色が悪く、デスクには栄養ドリンクの空き瓶がいくつも並べられています。煙草の臭いも強く、いつもより喫煙量が増えているようです。
口では「大丈夫」と答えていても、非言語的手がかりが「明らかに大丈夫ではない」と示していますから、あなたは後輩に対して適切な手助けをしてあげることができるでしょう。
でも、もしもこれがリモートワークだったとしたら。
あなたは後輩から返ってきた「大丈夫です」というメッセージを信じるしかありませんし、そもそも、後輩のタスク状況を把握できる環境が整っておらず、「大丈夫?」という声かけすらできていないかもしれません。
誰からも手を差し伸べられない状況に、後輩はひとり孤独感を募らせてしまうことでしょう。
人間関係を円滑にし、業務を効率的に進めるために、いかに非言語コミュニケーションが大事であるか。改めて考えてみると、その重要性に驚かされるのではないでしょうか。
「リモートワークだと、どう頑張っても五感をフル活用できないのだろうか」
「非言語コミュニケーションが成立しづらいリモートワークを続けていると、社内の人間関係や業務効率が悪化してしまうのではないか」
いいえ、決してそういうわけではありません。
リモートワークでもやりようによっては五感をフル活用することができますし、非言語コミュニケーションを成立させ、オフィス勤務時と同じように人間関係や業務効率を良好に保つことができるんです。
その方法としておすすめなのが、以下の3つです。
実際に筆者も取り入れており、その効果を実感している方法ばかりです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
五感をフル活用するためには、やはり「対面でコミュニケーションを取ること」が一番です。可能であれば、リモートワークを基本としつつも週に1-2回は出社する「ハイブリッド型リモートワーク」を取り入れてみましょう。
出社の頻度は、チームメンバーと話し合い、メンバーにとって心地いいと感じられる頻度に設定できるといいですね。
筆者の場合も、久しぶりに出社すると、毎度気持ちが引き締まる思いがします。
リモートワーク中もメイクや身だしなみは最低限整えるようにしていますが、家を出て公共交通機関を利用し、オフィスに出社するとなると、やはり気合いも入るものです。
非言語コミュニケーションはオフィスだけでなく通退勤時にも行われますので、「自分はたしかに社会の一員である」という実感を持つことができますよ。
以前はグループチャットなどで済ませていた定例報告も、今はなるべくweb会議を使って行うようにしています。対面でのコミュニケーションよりは五感の活用機会が少ないものの、視覚や聴覚をしっかり働かせることができますよ。
会議の本題の前後には、5分でもいいので雑談機会を設けるようにもしています。
会議や研修、商談の前にも、緊張を和らげたりコミュニケーションを円滑にするための「アイスブレイク」を挟むことがありますよね。事実、会議前に雑談タイムを挟むようになってから、メンバー全員がまんべんなく発言するようになったと感じています。
雑談タイムにはなるべくメンバー全員が会話に参加できるようにし、その後の会議中にも発言しやすい環境を作っておいてあげると、より効果を実感できるはずですよ。
web会議前後に雑談をしていると、チャットのメッセージだけでは知ることができないメンバーのリアルな状態を把握することもできます。
例えば、髭が伸びていたり髪がボサボサだったりすると、身だしなみに気を回す余裕がなくなっているのかな?ということに気付く。雑談中にそれとなく水を向けてみると図星だったようで、「実は、この業務がなかなか片付かなくて」という本音が返ってくる。
グループチャットだと「大丈夫です」「進めています」と返ってきていたのに、実際は、少し行き詰まっていたというわけです。
web会議や雑談タイムがなければ気付くことができなかった「非言語コミュニケーション」の一例と言えるでしょう。
五感は、対人コミュニケーションにのみ活用するものではありません。リモートワーク環境を心地いいものにし、業務効率を上げるためにも五感に優しい環境を作り出すことが大切です。
まずは五感の中でも代表格といえる「視覚」から。
色が私たちの脳や体にさまざまな影響を及ぼすことは周知の事実ですが、日本メディカル心理セラピー協会によると、集中を高めるのに適任の色は「青」とのこと。
青い色にふれると、体温や血圧、脈拍が下がり、精神的に落ち着いて冷静な状態になれるのだそうです。
青色に限らず、青緑や水色といった類似色でも同様の効果が期待でき、インテリアの一部や文房具、照明の色味を変えるなどの手段で簡単に取り入れられます。
リモートワーク時の集中力に課題をお感じの方は青色の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
・音楽が流れている方が集中できる
・適度に人の話し声がしている方が集中できる
・一切無音の方が集中できる
など、人によって集中できる環境はさまざまです。
リモートワーク中であれば、オフィスにいるときよりも、好きな音楽をかけたり耳栓をつけたりしやすいはずです。自分にとって心地いい環境を作り出し、高い集中に繋げましょう。
ちなみに、筆者のおすすめは「環境音」です。雨が降る音、爽やかな渓流の音、あるいはカフェのざわめきなど、さまざまな環境音がネット上でたくさん公開されています。
決して耳障りではなく抑揚もないので、BGMに気を取られることなく集中できますよ。
「生活の木」と学生の産学コラボで行われた実験によると、鎮静効果の香りには集中力を向上させる効果があるとの結果が出たそうです。
実験で使われた「鎮静効果の香り」が何かは明らかにされていませんが、一般的にはラベンダーやスイートオレンジ、イランイランなどが鎮静効果のあるアロマとして知られています。
アロマディフューザーやアロマストーンなどを使い、心地いい香りに包まれながらリモートワークに臨んでみてはいかがでしょうか。
「疲れた時には甘いものが食べたくなる」という欲求は、エネルギー源となる「ブドウ糖」を脳が求めている証拠です。
厚生労働省が運営する「e-ヘルスネット」においても、ブドウ糖は「脳がエネルギーとして利用できる唯一の物質」として紹介され、素早くエネルギーを補給するために適しているとされています。
ブドウ糖を効率よく摂取するためのお菓子やタブレットなども多く販売されているので、リモートワークのお供に取り入れてみることをおすすめします。
「噛むことが脳波に影響する」。
多くの人がなんとなく理解していることではありますが、実は科学的にも証明されている事実であることをご存知でしょうか?
日本のある研究チームが行った実験で、5分間ガムを噛んだ被験者はなんらかの感覚刺激に対する認知反応として現れる脳の電気活動「P300」の認知時間・反応時間が短縮することが分かりました。
P300の認知時間・反応時間が短縮したということは、感覚刺激に対してより素早く正確に反応できている=集中できているということを表しています。この傾向は、噛む運動を繰り返すほど顕著になったということです。
この結果から、15分ほどガムを噛んでから仕事や勉強に臨むと、集中力・覚醒といった面でいい影響があると考えられます。
今回は、リモートワークでも五感をフルに活用し、人間関係や業務効率を向上させるテクニックについてまとめました。
改めて、筆者おすすめの方法を振り返ってみましょう。
・週1-2回程度の出社日を設ける
・web会議は積極的に取り入れ、前後に雑談の機会を設ける
・仕事に集中できるよう、五感に優しい環境を作り上げる
–視覚:インテリアや文具で「青」を取り入れる
–聴覚:自分に合ったBGM(あるいは無音)を見つける
–嗅覚:鎮静効果のあるアロマオイルを取り入れる
–味覚:ブドウ糖を摂取する
–触覚:「噛む」運動を取り入れる
リモートワークになってからどうにもやる気が出ない、生産性が下がったという方は、ぜひ五感の活用状況を振り返ってみてください。意外なところから、今の状況を大きく改善することができるかもしれませんよ。
東堂
読書好きが高じて小説家デビューを果たした物好き。クラシック音楽とお菓子作りを好みます。