デンマークのノマドワーカー、環境エンジニアの蒔田さんにインタビュー

自由の歩き方 編集部

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2020.04.10
デンマークのノマドワーカー、環境エンジニアの蒔田さんにインタビュー イメージ

ワークライフバランスが優れていると言われているデンマーク。デンマークの首都コペンハーゲンに在住の環境設備エンジニアであり、ノマドワーカーである蒔田智則さんにノマドの良さ、デンマークと日本の働き方、働く意識の違いなどをSKYPEインタビューでお聞きしました。

環境設備エンジニア × ノマド
蒔田 智則(マキタ トモノリ)
1980年生まれ / 出身地:千葉県
 
エネルギーデザインの視点からさまざまな建築プロジェクトに携わる環境設備エンジニア。ロンドン、日本で仕事をしていたが、デンマーク人との結婚を機にデンマークへ移住後。現在は環境設計事務所に勤め、デンマークを中心に様々な建築プロジェクトに携わる。
 
コペンハーゲンの運河沿いに建設予定の「ウォーターカルチャーハウスコンペティション」では、隈研吾建築都市設計事務所率いるデザインチームの一員として最優秀賞を受賞。
 
2019年よりフォーブスジャパン オフィシャルコラムニストとして、執筆も行う

空気のデザイナー蒔田さん

※ヘンリックイノベーション

今回はデンマーク在住のノマドワーカーである蒔田さんにデンマークと日本の働き方の違い、働く意識の違いなど色々とお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
 
まずは蒔田さんのお仕事と経歴を教えていただけますか?

現在は、環境設備設計事務所のHenrik-innovationと日本の構造設計事務所 Structured Environmentに所属しています。

ダブルワークということは、蒔田さんはフリーランサーでパートナー契約をされているということでしょうか?

一応Henrik-innovationが常勤でStructured Environmentが非常勤という形です。デンマークでは、パートタイム、フルタイムのこだわりはないので、Henrik-innovationで週3日、structured environmentで週2日ほど働いていますね。

蒔田さんのような働き方は日本ではまだ少なく、デンマークらしさを感じます。実際にどんな業務をされているのでしょうか?

みなさんが快適に過ごせるように空調デザイン、省エネ住宅のデザインなどをする環境設備エンジニアです。簡単に言うと室内環境をデザインする「空気のデザイナー」です。
 
太陽の光をどれだけ取り込んだ家にするか設計をしたり、設定した温度や湿度に建物を保つためにどれくらいのエネルギーが必要となるのか計算をしてシュミレーションしたりしています。環境設備に関してアドバイスをする仕事なので、建築家と一緒に仕事をすることが多いですね。
 
あとは、リサーチのプロジェクトもありますよ。現在だと、スウェーデンのオーガニック化粧品会社と一緒に面白い実験をやっています。化粧品の成分を含んだ空気が人体にどれだけ影響あるのか、化粧品を含んだ空気がどう動くのかなどをリサーチしています。

空気に違う成分が含まれることでどう変化するか気になります!建築だけでなく、空気の実験もされるのですね。

空気にかかわることなら、色々やりますね。当たり前ですが、空気ってどこにでもあるので色々な仕事がありますし、面白いです。
 
例えば、サウナの空間って90℃あっても、空気がとても乾燥しているので、その場に入られます。でも、90℃のお湯をかけられたら人は大火傷してしまいますよね。まわりの温度が人体に与える影響ってすごいなと思いますし、興味深いです。同じ温度・湿度の空間にいても、オフィスで仕事をしている人とマラソンを走り終えた直後の人では、感じ方が違いますしね。

そう言われてみると空気ってとても興味深いですね。そういえば、蒔田さんはロンドンにも住んでいましたが、現在と同じ仕事をしていたのですか?

現在と同じ環境設備デザイナーでしたが、ロンドンでは古い建物の保存や改修が中心だったので、仕事内容は違いますね。デンマークではもっと環境のことを考えたプロジェクトをすることが多いです。

仕事はどこでもできるから

なるほど。なぜデンマークなのでしょうか?

デンマーク人の妻との結婚がきっかけですね。デンマークは男女平等の文化なのですが、妻は僕が働いていたロンドンと日本についてきてくれたので、次は僕の番だなと。笑 
 
デンマークが子育てしやすい国ということも理由の一つでした。正直、僕の仕事はどこに行ってもできると思っていたので、働くために移住を決意したのではなく、結婚というプライベートの出来事で決めた感じですね。

では、デンマークへ移住後、すぐに今の環境設備エンジニアとして働けたのでしょうか?

僕は婚姻ビザで来たので、最初はデンマーク語の語学学校に通っていました。デンマークに住んで3週間ほど経った時に、求人募集を見つけて、デンマークの家具を日本に売るPRの仕事をしていました。
 
僕は今までずっと建築に携わる仕事をしていましたが、デンマークで職は見つけていませんでした。何か新しいことを経験したいし、収入はあったほうがいいなと思って、半年くらいパートタイムで働いていました。笑
 
正直よく知らなかったデンマークの家具のこともそのPRの仕事で詳しく知りましたし、デンマークと日本のデザインの関係がとても深かったこともその時知りました。

そうだったのですね。現在の企業にはいつ所属されたのですか?

2017年から現在のHenrik-innovationで働きはじめて、2019年からStructured Environmentでも働き始めました。

蒔田さんのワークスタイルとは?

1日のスケジュールはどんな感じでしょうか?

日本の企業にも所属しているだけあって、日本の企業とスカイプでビジネスミーティングをすることがほぼ毎日あります。デンマークと日本の時差は8時間あるので、こちらの早朝に連絡をすれば、日本の夕方になります。ですので朝は日本との仕事をする時間にしています。
 
子供がいるのですが奥さんも働いているので、役割分担として朝7:00~16:00まで働いて、17:00までに子供を迎えに行きます。就寝は23:00くらいでしょうか。

お仕事は、どんな作業・業務が多いのでしょうか?

デスクワークが多くて、打ち合わせやミーティングが多いですね。

現在のワークスタイルを教えていただけますか?

Henrik-innovation もStructured Environmentもco-workingスペースを拠点にしているので、その中のオフィスで働くことが多いです。
 
ちなみに今はStructured Environment のco-working スペース『BLOXHUB』で仕事しています。

※BLOXHUBの外観

※BLOXHUBのオフィス

どちらもco-workingスペースなのですね。デンマークのco-workingスペースはどうですか?

デンマークのco-workingスペースは空気がめっちゃ良いです!一人一人のパーソナルスペースも考えられていますし、快適に仕事ができます。
 
それにco-corkingに行く理由は他にもあって、僕の仕事はコンピュータがあればどこでもできますが、フリーランスに近いような小さな企業ではつながり(ネットワーク)がとても大事になります。
 
デンマークは大企業と地域密着の小さな企業(フリーランス含む)のどちらかで、いわゆる中堅の企業が少ないです。ネットワークを求めてco-workingスペースに集まる人たちはデンマークに多いですね。

※BLOXHUBの様子

実際のところ、仕事を獲るためにガツガツ、アグレッシブな感じでしょうか?

いえいえ、全然そんなことはありません。笑
 
僕が利用しているBloxhubはコペンハーゲンの中でもオープンなco-workingスペースです。インターナショナル企業も25%いれるっていうポリシーもあります。入居している企業同士をマッチングさせて新しいビジネスを作り上げて行くことに対して、積極的でもあります。
 
朝ごはんを食べるモーゲンダックとか月に2回あって、入居している130社のなかで50社くらいは参加していて、ヒュッゲ(心地が良い)ですね。月に1回Friday’s Barがあったり、講義やワークショップがあったり、マラソンクラブやスイミングプール部もあるし、交流がとても多いです。
 
僕はノマドワーカーだけどつながりをもとめて、co-workingスペースを使いますね。

※月に一度ある朝レクチャー。8時30分から半時間ほど。仕事を始める前のコーヒーを飲みながら、インスパイアを受けたりする。

では基本的にはco-workingスペースで仕事することが大半ですか?

所属しているどちらの企業も家で仕事することもOKな会社ですし、子供がいるので自宅で仕事もします。
 
Henrik-innovationのボスは、コペンハーゲンから電車で10〜15分のところにある郊外のRoskilde(ロスキレ)に住んでいるので、家で仕事することもあります。デンマークでは、会社に通勤しないといけないという決まりは特にないですね。

蒔田さんや蒔田さんのボスのように、ノマドワーカーはデンマークに多いですか?

ノマドワーカーは多いと思いますよ。

その場所ごとに適した仕事がある

蒔田さんにとってノマドワークの良さってなんでしょうか?

分別(強弱)できるのがノマドの良さ。
集中して効率良く仕事したいときはオフィスでやりますし、アイデア探しやスケッチであれば公園や広場などでリラックスしてやります。

一つの場所にとらわれないからこそできる働き方ですね。

そうだと思います。それに僕は、その場所ごとに適した仕事(作業)があると思っています。
 
例えば、大きなスクリーンがあるオフィスだったら図面を描く仕事が適していますし、クリエイティブな作業であればペンと紙があればオフィスの外のほうがはかどる場合もあります。

オフィス以外の場所だと、どんなところで仕事しますか?

紙とペンを持ってスケッチするときは、運河沿いや公園とか外が多いですね。カフェで仕事するのはあまり好きではないです。

日本では僕みたいなフリーランサーやリモートワーカーのビジネスマンがよくカフェで仕事をしています。笑

デンマークはコーヒーが有名でチェーン店はほぼなくて、ローカルカフェ多いです。スペシャリティコーヒーを提供しているローカルカフェだと、ラップトップPC禁止のところも多いです。デンマーク、コペンハーゲンではカフェは作業する場所ではないですね。気の知れた人たちとコーヒーを飲みに行くところですね。
 
ちなみにコペンハーゲン中央図書館に併設されているDemocratic-Coffee(デモクラティックコーヒー)で働いているバリスタの松井くんのエスプレッソは度肝を抜かしますね。エスプレッソの概念が変わります。

日本もスペシャリティコーヒーを提供しているカフェやスタンドも増えてきましたが、大きくまとめるとカフェのイメージはデンマークと日本で違いますね。ぜひ機会があればエスプレッソ飲んでみたいです!ちなみに日本で仕事に来られた際は、どのような場所で働くことが多いですか?

Structured Environmentの東京オフィスがあるので、基本はそこでやります。笑
 
あとは滞在しているホテルの部屋のテーブルで仕事することが多いですね。住んでいないと東京で作業スペースを見つけることが難しいです。ただ、基本的に東京にいるときはミーティングや打ち合わせで人に会うことが多いので、待ち合わせ場所に向かう途中のカフェで仕事することはありますね。特にカフェのこだわりはないです。笑


※バッグはQwstionというブランドを愛用している蒔田さん。バナナの木でできているそうです。
中身:ペンケース、ノート、計算機、PC、ケーブルを入れている袋、ヘッドホン、スマートホン

SKYPEなどチャット&ネット電話で十分

会社、チーム、取引先との連絡ツールは何を使っていますか?

SKYPEが多いですね。スクリーンを共有して、手書きのスケッチをみせたほうが言いたいことを伝えやすい場合もあるので便利です。Microsoft office 365を契約していて、みんなでつかっています。
 
対面でのミーティングで顔と顔を見て話すと、大事なことを忘れてしまうこともありますが、スカイプだと効率良く打ち合わせができる気がしますね。それにミーティングするために移動する時間を考えると、スカイプのほうが効率良いですよね。

物理的に遠い距離にある日本の企業と仕事をする上で、不便さは感じますか?

デンマークと日本で8時間ほど時差がある分、朝方にミーティングを調整できるので、特に不便はないですね。むしろ生産効率が高くて良いです。ネットワークがあれば仕事を進める上で全然問題なく、距離が離れていることがネガティブ要素にならないです。


※現在8歳の娘さんとは、一緒にスケートパークに行けるようになったそうです。

リフレッシュは娘とのスケボー

仕事の合間のリフレッシュ方法などありますか?

リフレッシュってすごく大事ですよね。でも、あまり集中力を切らすのも好きではないので、休憩は短く、仕事は集中してやりきる方だと思います。子供の迎えもあって仕事を切り上げる時間も決まっているので、プレッシャーもあります。その分集中して仕事しています。

決められた時間で集中してタスクを完了する感じですね。僕はグダグダ長い時間仕事してしまうこともあるので、見習いたいです。
 
では、休みの日のリフレッシュ方法は何かありますか?

仕事が休みの日は、日曜大工や子供と遊んだり、自転車を直したりします。(デンマークは自転車大国)
子供もいるので、できるだけ外に出るようにしていますが、最近の公園の遊具は結構面白いですよ。笑
今の一番のリフレッシュは、8歳の娘とスケボーするのが楽しいです。

デンマークと日本の働き方の違い

デンマークはビジネスがしやすい国とも言われていますが、実際はどうなのでしょうか?

正直なところ、小さな国なので、そんなにオープンではないです。笑
 
デンマーク人はオープンで受け入れることや共有することは上手だと素晴らしいと思いますけど、デンマークでデンマーク人から仕事をとるのは大変ですよ。デンマークのことを知らないといけないし、書類も全部デンマーク語ですし、一般的に言ったら、なかなかデンマークで起業することは難しいと思います。
 
だけど、デンマーク人はイノベーティブなことをしようとするのは得意です。否定をせず、違う意見も文化も受け入れて、新しいものをつくっていこうという気持ちは日本人よりデンマーク人のほうがありますし、それがデンマーク文化かもしれないです。

具体的にはどのようなところでデンマーク文化を感じるのでしょうか?

目標までに小さなテスト&トライを多く重ねながら、考えていくところにデンマークのオープンな文化を感じます。デンマークの建物はレンガ造が多いですが、近年は二酸化炭素削減の観点から、木材で建物を作ることに目が向いています。ただまだ、あまり木造構造に詳しいエンジニアはいません。
 
その逆に、日本は木造が基本なので、木造の技術がしっかりしている。デンマークの建築家たちは木の事をよく知っているエンジニアに興味を持っているようですので、そこがうまくマッチングして出来るのだと思います。昨年デンマーク王立芸術アカデミーで行ったレクチャーは立ち見が出るほどの人気でした。

デンマーク人のフリーランサー率を教えていただけますか?どういう働き方をしている人たちが多いのでしょうか?

先ほどもお伝えしたように、大企業と小さい企業しかないデンマークなので、フリーランサーも多いです。
 
会社員でもフルタイムでない人も少なくないです。共働きが大半なので、ワークライフバランスは夫婦で整っている家庭も多いです。ちなみに、僕の家庭は、僕が週30〜35時間くらい、奥さんは週30時間働いていますね。なので、デンマークの企業側もフルタイムでないと採用しないってことはないです。社会保障もしっかりしているところはデンマークの良さですね。
 
ただ、永住ビザの取得には、フルタイム(週30時間)で8年間働いていないといけないという条件があるので、外国人は気にするかもしれないです。けど、その他の人たちはフルタイムとかパートタイムとか気にしないと思いますね。

日本では、フリーランサーの信用力が低くみられている印象があり、規模の大きい企業とは取引ができない場合もあります。デンマークでは、フリーランサーと仕事をするイメージはどうでしょうか?

デンマークではフリーランサーだから、企業(会社)だから、といって印象を変えることはないですし、信用低く見られることもないです。どこでもそうですが、実力とネットワークがあれば信用は得られると思います。
 

デンマークの人たちも小さい企業やフリーランサーと仕事をするのは慣れているので、そういう意味では日本よりデンマークのほうが起業しやすいと思います。
 

それに、社内メンバーだけで仕事をするよりも第三者と仕事したほうが相乗効果で良い時もありますよね。

日本の地方は生産効率高い!

最後になりましたが、日本のノマドワークを快適にするためには、どのような室内環境にデザインするべきなのでしょうか?

…(少し考えて)地方で仕事できると良いですよね。日本の地方は人も多くなくて、周りのプレッシャーもなくて、空気も良い環境なので、仕事の生産効率上がると思いますね。
 
日本の田舎は良いところたくさんあるし、ポテンシャルも高いと思います。デンマークの田舎は本当に何にもないです。笑 10万人くらいの都市は良いけど、それ以外の街(田舎)に移住するって話は聞かないですね。
 
デンマークの田舎はサマーハウスでゆっくりする場所ですね。笑

蒔田さん、この度はご協力いただき、ありがとうございました!

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